みやTのカウンセリング実践力通信2

 

◆カウンセリング・コラム② : エピソードから、その人の『生き方』を読み解け!

前回、「エピソード」(ある日の思い出、ある日の出来事)に注目してクライエントの話を聴くことが重要だとお伝えしましたが、「子ども時代のエピソード」は特に重要です。「エピソード」は、写真のように視覚的な「場面」、「情景」として覚えていることが多いものですが、それでは、皆さんはどんなエピソードを覚えておられるでしょうか?ご自分の子ども時代を振り返って、印象的な思い出を、2つ、3つ、思い出してみて下さい。どんな場面が、頭に思い浮かびますか?

子ども時代の思い出は、本当は星の数ほどあるはずです。それでは、数ある「エピソード」の中で、どうしてそのエピソードを覚えていたのでしょう。そこには、重要な「理由」があります。
それは、そのエピソードが、あなたの「生き方」と深く関わりがあるからです。人間は、自分の「生き方のスタイル」に関わる記憶を、選択的に思い出す傾向があります。これは「アドラー心理学」の考え方です。子ども時代の「エピソード」の中の、「ものの見方」や「振る舞い方」、そこで感じる「感情・情緒」を振り返ることで、自分の「生き方のスタイル」や「対人関係のパターン」を読み解くことができます。

ここで、臨床例を挙げてみましょう。なお、この「通信」で取り上げる事例はすべて、架空の事例であることをご了承下さい。
一雄さんは営業成績は良好でしたが、入社3年目に気分が落ち込み始め、カウンセリングを受けにきました。しかし、自分でも落ち込み始めた理由は、よくわかりませんでした。これまでの生活について尋ねる中で、次のようなエピソードが語られました。

「勉強はできる方だったんですが、小6の時に、塾で模試の結果発表があって、それまで余裕で勝っていた友達に、負けたことがあったんです。その子とは、よく点数を見せ合っていたんですが、その時は自分の出来が悪かったので、友達に点数を聞かれても、『いや、いいわ』って断ったんです。そしたら、『お前、あかんかったん違うん?(笑)』って笑われて・・・・なんか、バカにしたような目で見るっていうか・・・・・見下すっていうか・・その時の目がすごく嫌でした・・」と話されました。

そのカウンセラーは、普段はこうした質問はあまりしませんが、〈・・今の職場で、同じような気持ちになることはありますか?〉と尋ねました。すると、「・・・営業の成績は、毎週ミーティングで報告するんですけど・・・・最近、だんだん成績が落ちてきて・・・後輩にも抜かれるようになったんです・・・。後輩は、別に嫌なことは言わないですけど、どこかバカにしてるんじゃないかって気がしてきて・・・上司もどう思ってるのかが、すごく気になるようになりました・・」と語られます。

これは単なる学業や営業成績の問題などではなくて、一雄さんは、周りから「バカにされる」、「見下される」ということに、強い不安や葛藤を抱いていることが考えられます。自分が成績優秀で勝っている時は、「自尊心」を保つことができるけれども、自分が下になってしまうと、途端に「バカにされている」、「見下されている」と感じて不安になり、自分がとても小さいみじめなもののように感じてしまう。そうした「中核的テーマ」が、子ども時代のエピソードにあらわれます。
このように、「過去のエピソード」と「現在のエピソード」を「二重写し」に見た時に、そこに共通するものが、クライエントの「生き方のスタイル」や「対人関係のパターン」だと言えます。

次回は、「3つの対人領域を二重写しに見る」ことについて、お話ししたいと思います。